リクルートスーツと略礼服
こんにちは
4月に入り、街には今月新入社員になったばかりと思われる、
上下黒のスーツの方をたくさんお見掛けします。
今年入社された方は、誠におめでとうございます。
ファイブワンも先日無事入社式を迎えることができました。
新しく入社した職人達と共に、また一年、新たな歴史を刻んで参ります。
今年度もよろしくお願い致します。
本日は日本独特の「黒いスーツ文化」のお話を致します。
まずはすっかり就職活動の定番になりつつある、
リクルートスーツの話です。
就職活動が始まる時期になると、学生の方々は
一斉にこのリクルートスーツをお召しになるのですが、
本来ビジネスに向かない黒一色のスーツをわざわざ選んで着るというのは
自分が学生の頃から不思議だなと感じておりました。
日本以外の国では黒スーツ・白シャツ・黒シューズという格好は
ボディーガードの方かお葬式用という感じで、
ビジネスではまず見かけません。
昔あるイタリア人のお師匠とお話した時も、日本の
黒スーツ・白シャツ・黒シューズスタイルを
「ギャングスタイル」と表現しておられ、
見え方がここまで違うのかと驚いたことがあります。
調べてみるとリクルートスーツはもともと
「マナーがよくわかっていない学生に最低限
恥をかかない格好をさせる」という意図で作られたようです。
歴史は意外に古く、生まれたのは1970年代の後半です。
当時は入社試験の面接マナーがわからず、応援団に学ランを借りて
面接に行った学生もいたそうです。
こういうマナーのわかっていない学生を面接に行かせて
大学の名前を落とすわけにはいかないということで、
大学の生協と百貨店が協力して「就職活動向けスーツ」を売り出し、
それがリクルートスーツの起源になったとされているようです。
生まれた当時は黒一色というわけではなかったそうですが、
特に2000年代頃からは「無難な気がするから」とか、
「個性を主張しないのが謙虚な感じがしていい」という
なんとも曖昧な理由で、本来のルールを無視して
黒一色になっていったようです。
昨今はインターネットもあり、
どんな格好が良いかくらいは簡単に調べられると思うのですが、
「皆一緒で無難だし楽だから」という理由から
未だ黒いリクルートスーツが着られているようです。
しかし、大切な面接のシーンに着る服を「無難だから」で
選んでいいものかと個人的には少々疑問に思います。
仕事の場にしろ面接の場にしろ、
服装や立ち振る舞いは様々な情報を発信しています。
その仕事に対して(あるいはその面接に対して)
どれほどの気持ちで臨んでいるのかは、
服装からもある程度見られているものです。
だから高いスーツを着ろとかお洒落をしろという話ではありません。
ただ、面接という自分を知ってもらうための場で、
自分の個性を消す為の工夫をするのは矛盾していると思うのです。
それよりもあくまで悪目立ちしないように、それでいて
自然に自分の個性を引き立たせてくれる服装を考える方が、
よほど理にかなっています。
何事も、「とりあえずこれでいい」と受け身になるのではなく、
「これがいい」という風に積極的に
アプローチする方が、きっと後悔の無い結果があると私は考えます。
もう一つ、日本独特の「黒いスーツ」文化が「略礼服」です。
実は略礼服が存在するのは日本だけです。
深い歴史や由来があるわけではなく、
戦後に一洋服会社が勝手に決めた服装です。
「いろいろルールを覚えなくてもこれさえ着ておけば
冠婚葬祭どこでも大丈夫ですよ」というキャンペーンを打って売り出し、
それが戦後という懐事象の厳しかった時勢と合わさって広まりました。
実際は一番失礼があってはいけない「お葬式」を基準にした
スタイルになっています。
海外では結婚とお葬式は全く別に考えるのが普通であるようで、
結婚式に参加する際に日本のようなマットなブラックスーツを
着ることはほぼないそうです。
※タキシード等のフォーマルウェアは、色は黒くても全く別物です。
服飾史家の中野香織氏は略礼服を
「ガラパゴス・フォーマル」と表現しており、
なかなか言い得て妙だなという感じが致します。
とはいえ略礼服はすっかり日本に浸透していますし、
ルールをしっかり意識していれば決して失礼な格好ではございません。
特にお葬式の場合では、準礼服であるディレクターズスーツで行くのは
あまり一般的ではなく、むしろ略礼服のほうがおすすめです。
略礼服そのものではなく、
「とりあえずこれさえ着ておけばいいでしょ。」という
考え方に問題である思います。
同じ服のようでも細部を意識すれば仕上がりも
見た目も全然違って面白いですよ。
本日は2種類の黒いスーツついて書きましたが、
どちらも本来大切なシーンで着る服なのに、
なぜかなんとなくで選びがちな服装であるようです。
困ったときは、適当に済まそうとせず是非相談だけでも
ファイブワンにいらしてください。
きっとふさわしい服の御提案をさせて頂けると思いますよ。
ファイブワン大阪本店 中村
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