ファイブワン オーダースーツ トークセッションナンバー06:ORGANIC GRILL KUGENUMA KAIGAN シェフ 木下俊氏 前編
ORGANIC GRILL KUGENUMA KAIGAN
シェフ 木下俊氏
スーツの聖地・サヴィル・ロウで修行した偉才、岸由利子が聞き出す、オーダースーツの魅力。
『ファイブワン・トークセッション』第6回のゲストは、『ORGANIC GRILL KUGENUMA KAIGAN』のシェフ・木下俊氏。
ロイヤルパークホテルで勤めたのち、各種事業を経験し、2012年『モッシュキュイジーヌ』を設立。出張料理、イベントの企画・運営、ケータリングサービスを手掛け、イタリアン、フレンチ、エスニック等の本格手作り料理を中心に、“エンターテイメント”と“アグリ ビジネス”を取り入れた事業を展開してきた同氏は、この2015年8月9日、満を持して、鵠沼の波打ち際に一軒家のオーガニックレストラン『ORGANIC GRILL KUGENUMA KAIGAN』をオープン。
目と鼻の先には、江ノ島。閑静な住宅街の一角に建つ緑豊かな180坪の同店では、オーガニックチキン
&ポークと特製熟成肉ハンバーグの2種類から選べるランチプレートや、お肉とお魚から選べるプリフィクスコースまで、素材にこだわった創作フレンチ料理を味わい尽くせる、落ち着いた雰囲気とレトロモダンな空間を演出しています。
対談者にファイブワン代表・森俊彦氏を迎え、料理との出会い、素材にこだわる理由、シェフならではのオーダースーツの誂え方、本物とそうでないものの違いなど、多面的なテーマで語っていただきました。
45分間、心臓停止。1週間、昏睡状態。奇跡的に助かった命から学んだ“食”の大切さ
質問 : 木下樣、森樣、本日はお忙しい中、ありがとうございます。まず、お聞かせください。木下シェフは、どのようにして、料理と出会われたのですか?
木下シェフ(以下、木下): 幼稚園の頃から、母の料理を手伝うのが好きでした。小学校、中学校、高校と、学生時代は、部活やスポーツにもたしなみましたが、自宅では、常に料理に触れていましたね。
質問 : では、迷わず料理の道に進まれた?
木下 : そうですね。将来はサラリーマンではなく、「手に職を付けて、料理の道に進もう」と、物心のついた頃から決めていました。高校卒業したあと、1年間、料理の専門学校に行き、19歳で都内のホテルに就職しましたが、当初より、独立してお店を持ちたいなと思っていたので、ホテルでは5年を修行期間と決めて働きました。
もちろん、突き詰めていけば、他にもそこで学べることはたくさんあったと思います。でも、下地といいますか、基礎的な部分はある一定のレベルまで体得できましたし、その間、出場した全国的な料理のコンクールでは1位をいただく機会にも恵まれて、結果としては残せたのかなと。営業や経営など、料理以外の仕事も経験・勉強しておきたいなと思い、ホテルでの勤務から離れることにしました。それから2~3年は、さまざまに人とのつながりを増やしていきながら、独立のタイミングを見計らっていましたね。
質問 : 料理のエキスパート、つまり、木下さんは、“職人”でいらっしゃいますが、ビジネス側のことを、しかもかなりお若くして会得しようという視点をお持ちの方って、かなり珍しいかと…
木下 : そうかもしれませんね(笑)。ところが、ちょっとした事件があったんです。26歳のある日、何の前触れもなく突然、バタッと倒れて、意識がなくなってしまって。45分間ほど、私の心臓が止まってしまったんですね。
質問 : え!ちょっと、待ってください。どういうことでしょうか?
木下 : 当時の私は、とにかくやりたいこと、やるべきことが山積みで、自分の食事にゆっくり時間をかける余裕がありませんでした。牛丼とか、ボリューム感のあるものを一食、ガッツリ食べて、あとはサプリメントなどで補えば、栄養は摂れる、大丈夫だと勘違いしていたんですね。医者の方からは、原因はストレスと過労とかしか言われなかったのですが、振り返ってみると、おそらく、それまでの過度に不規則な食事や不摂生が祟ったのでは?と思います。
「意識が戻っても、植物状態か半身不随などの後遺症が残るだろう」と言われていたそうですが、何ひとつなく、意識も奇跡的に戻って、この通りです。ただ、1週間くらい、昏睡状態だった時の記憶はないんですけれど(笑)。
質問 : 無事帰還されて、本当に良かったですね。しかし、驚きました。突然、もの凄いことをさらっとおっしゃるので。
木下 : そういう経緯もありまして、やはり食べ物は体を作る一番大事なものだということを痛感しました。料理人として、そこは絶対にブレてはいけないことだと。心新たに、それ以後は、農薬を使わない野菜など、安心して、安全に食べられるもの、かつ栄養価の高いものというように、素材にこだわるようになりました。
質問 : なるほど、納得です。
色とりどりの食材を組み合わせるように。シェフのオーダースーツは色選びも独特
質問 : ところで、今年8月9日にこちらの『ORGANIC GRILL KUGENUMA KAIGAN』をオープンされたとのこと、おめでとうございます。今で2ヶ月と少し経ちましたが、お客様の反響はいかがですか?
木下: おかげさまで、当店のオーナーさんをはじめ、これまでに自身が携わってきた事業で知り合った方など、さまざまな方たちの応援やお力添えに助けられ、この地域はもちろん、東京や遠方からも足を運んでくださるお客様で、連日、賑わっています。
質問 : もう、予約は先々までいっぱいですか?
木下 : はい、嬉しいことに、最近、満席の日も増えてきました。
質問 : 幸先良く、何よりです。森社長は、オープンの日にも、こちらにお越しになられたそうですね。
森氏(以下、森): はい、ディナーを頂きました。木下シェフの“オーガニックレストラン”と私共、ファイブワンの“ナチュラル”なオーダースーツ。いい素材、本当に良質なものを使って、お客様に楽しんでいただく。そういったスーツ作りのこだわりと、こちらの食に対するこだわりが、方向性としてすごく近いなと思いました。
その共通点に魅力を感じたからこそ、早速、木下シェフに打診させていただきました。ありがたくご快諾いただき、このような形でインタビューも実現し、さらには、ブランドのイメージ写真の撮影も行わせていただくに至りました。レストランのガーデンと建物の一部をロケーションに、モデル4名を起用した撮影では、写真に映り込むパーティーシーンのテーブルやお料理などを木下シェフにコーディネートしていただきました。近日、当社のウェブサイトで公開予定です。
質問 : それは楽しみですね! 木下シェフ、今回のような撮影でご自身のレストランが使われるのは、初めてでいらっしゃいますか?
木下 : そうですね。こちらのレストランでは初めてです。スーツのコーディネートや見せ方など、ファイブワンのこだわりの一つひとつを目で見て、肌で感じられたので、撮影風景を見ている側としても楽しかったです。
質問 : ところで、木下シェフがお召しになられているスーツ、ボタンがとても変わっていますね。
森 : 今日着ていただいているスーツは、ファイブワンファクトリーが縫製を手掛けるブランド様でお誂えいただいた一着です。色使いや色合わせは、食材を合わせる時のイメージで決められると聞き、ユニークなこだわり方だなと。シェフの作るオーダースーツというのが面白いなと思いまして。
木下 : このジャケット、裏地は薄いピンクで、袖の部分だけストライプ柄なんですよ。以前、誂えた一着は、表地はブラック、裏地は鮮やかなレッドにしたりと、パッと見て表からは分からなくても、ビビッドな配色など、何かワンポイントあると、着ている自分も楽しくなります。
質問 : カラフルなサラダのプレートが想起されます。粋なこだわりですね。
オーダースーツとオーガニックグリルの共通点は、ナチュラル。
「例えるなら、ファイブワンの工場は“オーガニック・ファクトリー”です」
質問 : ファイブワンでスーツをお誂えされる時、他にも、これは大事にしているという点があれば教えてください。
木下: 先ほど、森さんからもお話にあったように、ファイブワンのオーダースーツと私の料理の共通点である“ナチュラルさ”。これは、誂える際も、ディテールや全体の空気感において保つことを意識しています。 あと、大事にしていることというよりは、ファイブワンのスーツそのものについての感想になるかと思いますが、“身に付けていて、無理なく、スッと馴染む感じ”が絶妙です。プレーンでシンプルな生地でありながら、手で触れた時に、“あ、これは、自分の体にすごくよく合うな”と感じましたし、カチッとしているのに、動きやすく、心地が良いんです。
質問 : “あ・うんの呼吸”といいますか、お二人を拝見していて、心から互いにリスペクトし合われているという印象を受けます。
森 : 木下シェフは、オーガニックの野菜を研究されているのですが、種類の豊富さだけではなく、地域の方から仕入れたり、新しいものと組み合わせたりなど、さまざまな取り組みをなさっているんです。その姿勢が、私共の素材や毛芯へのこだわりと、とても良く似ていまして。僭越ながら、オーダースーツとオーガニックレストランは、同じ…というような感じさえしました。
質問 : なるほど、では、先日リニューアルされたばかりのファイブワンの工場をお料理の世界で例えると何になりますか?
森 : :“オーガニック・ファクトリー”という感じになるでしょうか。
一同:(笑)
質問 : 素敵なご回答、ありがとうございます。こちらのレストランは、都内から1時間ほどで来れる場所ですし、近くには湘南T-SITEやRon Herman Cafe辻堂店など、お洒落なスポットもたくさんあるそうですね。このインタビューの後、皆さんで木下シェフのお料理をいただけるとのこと、ワクワクしています。
森 : 私も楽しみにしています!
質問 : 『ファイブワン・トークセッション』第6回のゲストは、『ORGANIC GRILL KUGENUMA KAIGAN』のシェフ・木下俊氏、対談者は、ファイブワン代表 森俊彦氏でした。木下様、森様、本日は、貴重な時間をありがとうございました。
インタビュー/文 岸由利子